国際内科学会CPC  5月29日
司会   筑波大学  住田孝之教授
症例提示 旭中央病院 塩尻俊明先生

腸間膜動脈狭窄症、心筋梗塞を既往とし、末梢神経障害、発熱にて入院しSLEの診断を受け、治療抵抗性の血球貪食症候群、MRSA胸膜炎を併発し、最終的に呼吸不全、急速な意識障害を来し死亡した症例。

症例;S.H. 72歳、女性
主訴;発熱、四肢脱力
既往歴; 1984年、腹腔動脈、上腸間膜動脈狭窄にて自家大腿静脈バイパス術施行。
     1989年、血管造影では自家静脈グラフトは完全閉塞、後腹膜分枝の増生
     1993年、心筋梗塞(広範な前壁梗塞)tPAにて保存的に加療
現病歴;1998年4月、両下肢の筋力低下を自覚、その後両上肢の筋力低下も出現し、徐々に増悪。5月には、歩行困難、箸も持てなくなる。5月下旬より39℃台の発熱があり当院内科入院となる。
入院時現症:身長150cm、体重50kg、血圧122/58mmHg、脈拍94/分、体温39.1度、眼瞼結膜は貧血様、関節痛なし、四肢遠位有意の筋力低下、両下肢遠位の異常感覚、四肢深部腱反射消失。
入院時検査所見:WBC 2900/ul RBC 307X104/ml Hb 8.9mg/dl Plt 12.3X104/ul PT 38.3 s (11.5) APTT 60.5s(29.2) ESR 138mm(1時間値) CRP 6.7mg/dl 検尿:尿蛋白(3+) 尿糖(-) 硝子円柱(3+) 顆粒円柱(+) ろう様円柱(+) 抗核抗体1280倍 diffuse型 抗ds-DNA抗体 113.6U/ml RF(-) 抗Sm抗体陰性 CH50 <12.0U/ml C3 30mg/dl C4 6mg/dl ループスアンチコアグラント 陽性 抗CLβGPI抗体 49.0 U/ml 抗CLIgG、IgM抗体 陰性 PAIgG 197.8ng/107cells 髄液検査:細胞数5/mm3 蛋白 49mg/dl 糖 62mg/dl
心電図;V1-3QSパターン 心エコー;EF 43% 中等度左房拡大 
神経伝導速度;末梢神経近位での伝導障害
入院後経過
汎血球滅少、腎障害、抗核抗体陽性、抗ds-DNA抗体高値、抗リン脂質抗体陽性よりSLEと診断。腸間膜動脈狭窄症、心筋梗塞は抗リン脂質抗体症候群による血栓症状、末梢神経障害はSLEに関連した脱髄性の末梢神経障害を考えた。第5病日よりmPSLpu1seを開始し解熱が見られた。,PSL投与後筋カはMMT4レベルまで回復傾向を示した。その後PSL60rの投与を続けたが、血球滅少、出血傾向が続き、骨随穿刺を行ったが正常であった。第24病日よりmPSL half dose pulseを追加。さらにPAIgG高値からITP様の病態が考えられ,γグロブリン大量療法行ったが、効果は一過性であった。第28病日よりMRSAによる左胸膜炎発症。VCMの投与にて CRPは陰性化したが、持続ドレナージを必要としMRSAも陰性化しなかった。
感染をコントロールしながらPSL60r継続したが、低補体血症が続くため、第60病日にCPM pu1se行った。Plt 1.0x104と血小板減少、補体価にも改善も見られなかった。第73病日に再び骨髄穿刺を行ったところ著明な血球貧食像を認めた。77病日に骨髄生検を行ったが,リンパ腫や悪性腫瘍の転移などの所見はなかった。 HPS発症時にはCRPは陰性で、免疫複合体は正常域で、抗DNA抗体は入院時より改善していたが、低補体価は持続しいた。各種ウイルス抗体価に有意な変化なく、真菌抗原は陰性で、IFNγ、IL-6のどの高サイトカイン血症も認めなかった。SLEに関連したHPSを考え、γグロブリン大量療法を再度施行したが、改善は一過性であった。
第90病日頃から、発熱、呼吸状態の悪化、急速に意識レベルの低下が出現した。右側にも胸水、両肺野浸潤影、頭部CT上左前頭葉皮質下に低吸収域を認めた。髄液検査では細胞数5/mm3、蛋白593mg/dlと著明な上昇を認めた。その後、徐々に状態悪化し第101病日永眠された。

図1. 骨髄像
図2. 腹部レントゲン
図3. 頭部CT